コードを書くコストはほぼゼロになった——でも「良いコード」はまだ高い

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キュレーターコメント

AIコーディング時代に「何を作るか・作らないか」の判断軸を根本から見直すべき、という視点が鋭い。エージェントを使い始めたエンジニア全員が一度は読むべき一文だと思い、選んだ。

概要

Simon Willisonが「Agentic Engineering Patterns」シリーズで核心を突く主張を展開している。**「コードを書くこと自体はもう安くなった」**という事実だ。数百行のきれいなコードを書くのに1日かかるのが当たり前だった時代、私たちは「コストが高い」という前提でエンジニアリングのあらゆる習慣を積み上げてきた。設計に時間をかけ、工数見積もりを念入りにやり、「この機能を作るだけの価値があるか?」と毎回問い直す——これらはすべて、コードが希少資源だったからこそ生まれた習慣だ。

ところがAIコーディングエージェントの登場で、コードを「タイプする」コストはほぼ消滅しつつある。さらに並列エージェントを使えば、1人のエンジニアが実装・リファクタリング・テスト・ドキュメント作成を同時進行できる。しかしWillisonが鋭く指摘するのは、「コードを届けるコストは無料に近づいたが、良いコードを届けるコストはまだ高い」という現実だ。彼が定義する「良いコード」は、動くだけでなく——バグがない、テストで検証されている、エラーハンドリングが適切、シンプルで保守可能、ドキュメントが最新状態に保たれている——といった要件を満たす必要がある。これらの品質を担保する責任は、今もエージェントを操る人間の側にある。

個人的にこの記事で最も刺さったのは最後のアドバイスだ。「『作る価値がない』と直感が言ったとき、とりあえず非同期エージェントセッションでプロンプトを投げてみよう。最悪でも10分後に確認して、トークン代が無駄だったと気づくだけだ」——この発想の転換が今まさに求められている。コードの稀少性に基づいた意思決定のパターンをアップデートするという、地味だが本質的な課題を、私たち開発者全員が突きつけられている。